その3:嚥下訓練について
~訪問看護サービスご利用中のAさんの場合~
嚥下訓練とは、脳血管障害や口・喉の周辺等の手術や障害等が原因で、食べ物や飲み物を飲み込む動作が困難となった場合(嚥下障害)に対する機能回復・維持訓練のことを言います。
Aさんは、平成14年に口腔内に腫瘍ができ、2度受けた手術の後遺症による影響から食べ物や飲み物を取ることが困難となりました。栄養不足が体力的にも深刻となってきたため、主治医の指示の下、訪問看護師による点滴治療のフォローと共に嚥下訓練が実施されるようになりました。
(1) まずは頚部聴診を
御本人様も気付かない内に痰や食べ物が喉の奥や気道(肺の入り口付近)に残っている場合があります。喉元から“ゴロゴロ”と音が聞こえたら誤嚥性肺炎の危険性があるので要注意。
訓練の前に痰や食べ物の異物を認めたら、まずは除去しましょう。
(2) 頚部のアイスマッサージ
嚥下動作にとって大切な嚥下機能を行う運動筋や神経を寒冷刺激し機能を呼び起こします。
唾液の促進による食欲を増進させるための唾液腺 マッサージ効果にも役立ちます。
(3) 綿棒によるアイスマッサージ
食べ物の通り道である喉の奥周辺まで丁寧にマッサージして嚥下機能を呼び起こします。
(4) 舌の可動域訓練です。
舌は食物を喉元まで運ぶ大切な機能を持ちます。
ちょっと大変そうだけど、手術で萎縮し短くなった舌にこの訓練を実施すると、
舌の動きが良くなると言われます。舌の動きが良くなると、食べ物が食べ易く、噎せの防止に効果をもたらします。
(5) 電動歯ブラシを使ってマッサージ
舌や口の中を電動歯ブラシのバイブレーションを利用してしっかりマッサージ。電動歯ブラシの振動が口の中全体を刺激できるため、機能訓練としてとても効果的です。
(6) 嚥下訓練終了。お疲れ様でした!!
訓練前は1週間に6日間点滴を受けていたAさんですが、口からの食事の摂取量が増えたため、現在は週3日の点滴フォローで必要とされる栄養状態が維持できるようになりました。
訪問当初は話が聴きとり難い為、会話も少なかったAさんですが、嚥下訓練開始以降、食事量が増えただけでなく舌の動きも改善されたことで、会話も以前よりスムーズになりました。今では会話も弾み、笑顔が多く見られるようになったことを、訪問看護スタッフも嬉しく感じています。
今までに何度もチューブを使っての栄養摂取(胃瘻や経菅栄養)を勧められてきたAさん。“自宅で少しでも人間らしい生活をしたい”と願うAさんを、今日も訪問看護師は支えています。
※写真及び個人情報については御家族様の許可を得て掲載しております。