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その2:埋め込み式IVHポートの実際

~訪問看護サービスご利用中のBさんの場合~

最近では病気や寝たきり等が原因で、病院やクリニックへの通院が困難な方でも、自宅で療養されるケースが増えてきました。自宅での訪問診療と共に、点滴治療を受ける必要性のある方も増えつつあります。点滴を受けたいという希望があるにもかかわらず、血管がでにくいためにご苦労をされる方をお見受けすることは、入院中やクリニックへの通院に限らず、在宅療養でも同じだと思います。

 訪問看護サービスご利用中のBさんは、ご病気が原因で、食べ物や飲み物の飲み込みが不十分となり、自分の意志で栄養を十分に補給することが困難な状況となりました。従来より血管がでにくいBさんは、長い間、点滴を受ける度にとてもつらい思いをしていました。病院へ入院する度に何度も経菅栄養法の勧めを受けましたがご本人の意志でこれを拒否。主治医との相談の上、点滴に対する苦痛が最小限で、いつでも安全且つ、確実に点滴を受けることができるよう、埋め込み式のIVHポートを留置されました。

皮下(左鎖骨下)に埋め込まれたIVHポート

皮下(左鎖骨下)に埋め込まれたIVHポート

【埋め込み式IVHポートを使用しての点滴の実際】

フラッシュ用の注射器にヒューバー針をつけた状態

フラッシュ用の注射器にヒューバー針をつけた状態

 埋め込み式のIVHポートを使用して点滴を実施する場合は、実施前後に必ずカテーテル内のフラッシュが必要です。Bさんに埋め込まれた埋め込み式ポートは“グローションカテーテル”というタイプのものです。

 これは、カテーテルの先端に“グローションバルブ”というバルブがついているため、ヘパリンを用いたロックの必要がなく、点滴開始前後に生理食塩液をフラッシングするのみでカテーテル管理が可能です。Bさんのポートは、最大4週間はフラッシュ不要です。( ※ 埋め込まれたIVHポートによって、取扱いがそれぞれ違いますのでご注意を。必ず実施された医療機関に確認しましょう。)

 埋め込み式のIVHポートを使用して点滴を実施する際には専用の注射針(ヒューバー針)を用います。

 (1) 点滴の前に必ず消毒を。
普通の点滴とは違い中心静脈栄養法ですので、感染防止対策は確実に実施します。
十分な手洗いの後、80%アルコールで手指消毒し、ポート及びその周囲をイソジン消毒します。

点滴の前に必ず消毒を

点滴の前に必ず消毒を

ヒューバー針を穿刺します。(開始)

ヒューバー針を穿刺します。(開始)

(2) ヒューバー針を穿刺します。(開始)
IVHポートのセプタム部(突出部)にヒューバー針を穿刺します。
ヒューバー針は、翼状針と同様、翼があるのが特徴。
針が90度に曲がっているので、セプタム部に対して直角に穿刺しやすい構造となっています。

 (3) 点滴前にフラッシュをします。
フラッシュを実施することで、カテーテル内が閉塞していないかを確認します。
カテーテル内の閉塞を確認した場合は、無理をせず主治医へ相談しましょう。
場合によっては新たにポートの再挿入・再留置の可能性もありますので、無理なフラッシュは避けるべきです。

点滴前にフラッシュをします。

点滴前にフラッシュをします。

点滴が開始されました。

点滴が開始されました。

(4) 点滴が開始されました。
針の穿刺部からの感染防止対策は確実に実施します。
滅菌した切り込みガーゼで穿刺部周囲を保護します。
そして、ヒューバー針が動かないように、翼の部分をテ-プでガーゼと一緒に固定します。
ヒューバー針はテープ固定しないと穿刺部を支点としてくるくる回ったりと不安定なので要注意。
穿刺部の皮膚を傷めたり、感染源を作る原因となるので、固定はしっかりと確実に行いましょう。

 (5) 点滴中の状態です。
(6)点滴終了後、(3)と同様にフラッシュをします。
(7)フラッシュ終了後、針を抜き、(1)と同様に消毒をします。
(8)消毒後、滅菌ガーゼで穿刺部を保護し終了です。
※ 点滴後に入浴をする場合は、カテリープ等での穿刺部の防水保護が必要となります。
そして入浴後には、(1)と同じ方法で穿刺部を消毒し、ガーゼで保護しましょう。

点滴中の状態

点滴中の状態

IVHポート留置をされて間もなく一年が経過するBさん。
その間、Bさんは一度も入院することなく、主治医(Home Dr)と訪問看護ステーションとの医療的支援を受けながら在宅で穏やかに療養されています。
“IVHポートのおかげで点滴治療を殆ど苦痛なく確実に受けられるようになったことは大きな安心です。”と笑顔で話されるBさん。
現在はリハビリテーションを意欲的にこなし、明るく前向きに過ごされています。

【訪問看護師からのワンポイントアドバイス】

★ 埋め込み式IVHポートのメリットは、点滴が確実に実施可能となるだけでなく、

(1) 点滴中以外はカテーテルから開放されるので、運動や動作の妨げにならない。(ADLの低下防止に効果的です。)

(2) 入浴や着替え等の支援にあたり、介護の妨げにならない。

(3) カテーテルの閉塞やセプタム部の皮膚トラブル、或いは感染等のカテーテルトラブルが発生しない限り、半永久的に使用が可能である。

・・・等、様々な利点があります。
ただ、全ての方に適応という訳ではありませんので、適応については十分な検討が必要です。
また、医学的に専門的知識と管理が必要となりますので、
留置された後は、定期的な通院或いは訪問看護等、カテーテル管理に対するフォローが必要不可欠です。

※写真及び個人情報については御家族様の許可を得て掲載しております。

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